この会社について
大分県別府市で、学生を中心としたシェアハウスから始まった「SEKIYA.so」。立ち上がったのは2021年。単なる住まいではなく、起業や新しい挑戦に関心を持つ学生たちが集まり、同世代の起業家や大学教授、経営者などと接点を持ちながら、自分のやりたいことを形にしていくためのコミュニティとしてスタートしました。
今回は、SEKIYA.soが生まれた背景から、大分の学生が抱える課題、地方企業との接点、AI時代に必要になる経験、そしてこれから作っていきたい未来について伺いました。
「起業したい人」だけではなく、その一歩手前にいる若者へ
SEKIYA.soを始めた当時、すでに学生のうちから起業し、自ら動いている若者はいました。一方で、運営側が向き合いたかったのは、すでに行動している学生だけではありません。
「何かやってみたい」「起業には興味がある」「でも、具体的に何をやればいいか分からない」——そんな、まだアイデアや進む方向が固まっていない若者たちです。
そこで、同世代で起業している人を呼んだり、大学教授や経営者など、経験を持つ大人と定期的に話せる環境をつくったりしながら、学生が自分の可能性を広げられる場をつくってきました。
この地域で事業をする理由
SEKIYA.soでは、学生のキャリア観にも変化を感じているといいます。コロナ禍の頃は「起業したい」という熱量が強かった一方、現在は必ずしも起業だけを目指すのではなく、「自分はどう生きたいのか」「どんな豊かさを大切にしたいのか」といった、自分自身の価値観を見つめる学生も増えているそうです。
一方で、就職となると、いまだに東京の大手企業やコンサルなどへ意識が向きやすい。地方で働くことや、農業・観光・建設・介護といった地域に根ざした産業が、自分のキャリアの選択肢として十分に見えているわけではありません。
しかし、これからAIがさらに普及し、ホワイトカラーの仕事のあり方が大きく変わっていく中で、地方が持つ産業や資源の価値は、むしろ高まる可能性があります。大分には、人がいればもっと伸ばせる事業も多い。だからこそ、若者が社会に出る前に、もっと多様な仕事や生き方を知る必要があります。
会社を始めたきっかけ
SEKIYA.soの立ち上げには、地方ならではの温かさもありました。建物や家具、設備などを地域の人たちから支援してもらい、初期費用を抑えながらスタートできたといいます。
「これもう使わないから、持っていっていいよ」——そんな地域の人たちの協力が少しずつ集まり、学生たちの挑戦する場所が形になっていきました。
さらに、元旅館という場所の特徴もあり、一緒に風呂に入りながら語り合うこともあったそうです。東京のような都市部とは違う、別府だからこその距離感。人と人との関係性そのものが、SEKIYA.soを支える資産になっていました。
地域だからこその強み
話の中で繰り返し出てきたのが、「学生と地元企業の接点不足」という課題です。
大分で学生生活を送っていても、大分県内にどんな企業があり、どんな経営者がいて、どんな仕事があるのかを知る機会は決して多くありません。感度の高い学生であれば自ら情報を探し、地元企業と出会うこともできます。しかし、大多数の学生にまで情報が届いているかというと、まだまだ課題があるといいます。
特にインターンシップについては、東京などと比べると地方では文化自体が十分に根付いておらず、学生側が探していても、企業側の受け皿が少ないケースもあります。
企業は「若い人が来ない」と悩む。学生は「大分にどんな会社があるのか分からない」と悩む。実は近くにいるのに、出会えていない。そのギャップをどう埋めるかが、大分の未来を考える上でも重要になりそうです。

現在抱えている課題
SEKIYA.soが特に課題として感じているのが、志はあるけれど、具体的なテーマが見つからない学生です。
「将来起業したい」「何か挑戦したい」——そこまでは決まっている。でも、自分が何をするのかが決まっていない。
そこで重要になるのが、学生自身にゼロからビジネスアイデアを考えさせるだけではなく、実際の社会課題や企業の困りごとを渡してあげることです。
- 「若者の焼酎離れをどう解決するか?」
- 「SNSを使って大分の商品をどう広げるか?」
- 「地方企業のECサイトをどう改善するか?」
- 「インバウンド向けにどんな発信ができるか?」
テーマがあれば、学生は動き始めることができます。そして企画だけで終わらず、実際の企業へ提案し、実行まで経験できれば、一気に社会との距離が縮まります。
ただし、地方の学生にとっては交通費などの金銭的なハードルもあります。「経験した方がいい」と言うだけではなく、実際に動ける仕組みまでつくらなければいけません。
これから挑戦したいこと
SEKIYA.soとしても、これからは企画や議論だけではなく、より実際のアクションを増やしていきたいと考えています。
現在の学生たちにも、AIを日常的に使う学生、サービス開発ができる学生、コミュニティづくりに興味を持つ学生、すでにサービスを持ち、それを広げようとしている学生など、さまざまなタイプがいるといいます。
そこへ企業のリアルな課題を持ち込む。学生が手を挙げる。一緒に小さく実験してみる。成果が出れば仕事や報酬につながる。そんな循環を作ることができれば、学生にとっても大きな自信になります。
5年、10年後、「あの場所にいた人たちはみんな挑戦している」と言われる場所へ
SEKIYA.soが目指しているのは、学生時代に全員を起業家にすることではありません。大切なのは、挑戦する人が周りにいる状態をつくり続けること。
そして5年、10年後。当時SEKIYA.soに関わっていた人たちが、それぞれの場所で独立したり、新しい事業を立ち上げたり、何かに挑戦している。卒業して東京へ出たメンバーが戻ってきたり、東京で再会したり、現役の学生とOBがつながったり。SEKIYA.soを通じて出会った仲間たちが、時間が経っても互いに新しい挑戦を生み続ける。「自分たちはチャレンジャーであり続ける」——そんな共通の感覚を持てるコミュニティにしていきたいと語ります。
地元への想い
SEKIYA.soが若者の挑戦を支援する中で感じているのは、人は、自分が経験したものの中からしか選択肢を生み出しにくいということです。
学生が新しい事業を考えるときも、自分の身近な世界だけで考えてしまうと、アイデアの幅はどうしても狭くなります。だからこそ、企業で働いてみる。東京へ行ってみる。海外へ行ってみる。経営者と一緒に仕事をしてみる。知らない業界に触れてみる。そうした経験量を増やすことが重要だといいます。
学生が持っている最大の資産は「時間」
学生自身は気づきにくいものの、若者には大きな資産があります。それが、時間です。
社会人や経営者になると、1週間、1か月を一つのテーマに思い切って使うことは簡単ではありません。しかし学生なら、「夏休みに1か月、東京で挑戦してみる」「企業の課題を一つ解決してみる」「新しいサービスを作ってみる」ということもできます。たとえ結果が出なくても、その経験自体を次へつなげることができます。
その時間を、企業や経営者が抱えているリアルな課題と結び付けられれば、学生にも企業にも価値が生まれます。
東京・全国とつながるなら
今回の対話から、今後の新しい取り組みも見えてきました。
Roots Nextでは現在、東京・有楽町の「温泉座」などを通じて、大分県内の企業や生産者との接点を増やしています。そこで企業から、「若い人にSNSを手伝ってほしい」「ECを作ってみたい」「インバウンド向けの発信を考えたい」「新商品のアイデアがほしい」といった声が出てきた際に、SEKIYA.soの学生たちへテーマとして共有していく。
学生は企業のリアルな課題に挑戦できる。企業は若い感性や新しい技術と出会える。そして、うまくいけばプロジェクトや仕事へと発展する。今回のインタビューをきっかけに、「大分企業×学生」の実践的な挑戦機会を一緒に増やしていく方向でも意見が一致しました。
東京にいても、大分の若者を応援できる
東京には、大分出身の経営者や社会人が数多くいます。大分には、動きたい学生がいる。大分には、面白い商品や技術を持った企業がある。その間をつなぐ人がいれば、新しい挑戦はいくらでも生まれます。
SEKIYA.soが若者の最初の一歩を支え、地元企業がリアルなテーマを提供し、東京側の経営者や県人会が人や機会をつなぐ。そんな循環が生まれれば、大分で挑戦することそのものが、もっと面白くなるはずです。
読者へのメッセージ
今回の取材で印象的だったのは、「若者に何かを教える」ではなく、「若者が動く理由と機会をつくる」という考え方でした。
アイデアがないなら、企業の課題を渡してみる。人脈がないなら、先輩や経営者につなぐ。経験がないなら、まずやってみる。学生だからこそ失敗できる時間があります。そして大分には、その時間を必要としている企業がたくさんあるのかもしれません。
これからRoots Nextでも、大分県内の企業へのインタビューを通じて、企業の課題や「若者と一緒にやってみたいこと」を拾い、SEKIYA.soをはじめとする若者たちへつなげていきます。大分企業と若者の間に、新しい挑戦が生まれる。今回の対話が、その一つ目のきっかけになりそうです。
企業プロフィール
- 所在地
- 大分県別府市
- 設立
- 2021年
- 事業内容
- 学生・若者向けコミュニティ/シェアハウス運営/起業・挑戦の支援/地元企業と学生をつなぐ取り組み
CONNECT
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